最終更新日:2014年02月05日

重症胎児発育不全を伴う一絨毛膜双胎に対する胎児鏡下レーザー治療の有用性に関する臨床試験(症例募集中)

一絨毛膜双胎(sIUGR)についての臨床研究表示

一絨毛膜双胎では、胎盤の吻合血管を介して双方の胎児の間の血液の流れのアンバランスが起きた場合に、双胎間輸血症候群(Twin-twin transfusion syndrome、以下TTTS)になると考えられています。二人の羊水量に差を生じることによって診断されますが、TTTSが妊娠26週未満に発症した場合には、新生児治療が困難であり、さらに無治療では胎児の死亡率が90%以上となると言われていました。最近では胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(Fetoscopic Laser Photocoagulation、以下レーザー手術)という治療により多くの児が助かるようになりました。レーザー手術とは内視鏡(胎児鏡)をお母さんの子宮の中に挿入し、二人の胎児の間の胎盤の吻合血管をレーザー光線で凝固する治療法です。【TTTSの項を参照

一方、胎児発育不全を伴う一絨毛膜双胎(Selective IUGR)はTTTSに似た病態ですが、吻合血管を介する血流のアンバランスと胎盤の占有領域のアンバランスの両方が関連していると考えられています。我が国でのSelective IUGR症例の予後調査では、両児ともに後遺症がなく生存したケースは、臍帯動脈血流に異常が無い場合は約90%であったのに対し、臍帯動脈血流に異常がある場合は約35%でした。また、両児ともに予後不良(死亡または後遺症)となるケースは、臍帯動脈血流に異常が無い場合は約4%であったのに対して、臍帯動脈血流に異常がある場合は約40%でした。さらに、臍帯動脈血流異常に加えて羊水が極端に少ない重症Selective IUGRでは、小さい児の90%以上が死亡し、また大きい児の約55%も死亡に至っていました。一部の生存した小さな児にも神経後遺症がありました。つまり「臍帯動脈血流異常」と「高度な羊水過少」がある場合は予後が悪く、注意が必要であることがわかりました。なお一絨毛膜双胎において一方の胎児が子宮内で死亡した場合には、他方の生存している胎児の血液が吻合血管を介して死亡した胎児に向けて急速に移動するために重症貧血やショック状態を引き起こすことがあります。この現象によって生存していた胎児の死亡や後遺症をもたらす危険があります。

重症Selective IUGRは、前述のように経過がよくないことがあるため、治療法の確立が課題となっています。重症Selective IUGRに対するレーザー手術の有効性や安全性は、TTTSと同等であることを期待されていますが、実証されたデータは未だありません。しかし、Selective IUGRに対するレーザー手術で胎児間の血流が遮られることにより、子宮内胎児死亡を防ぐことが可能となるばかりでなく、妊娠期間の延長に伴って胎児の成長が期待でき、生後の経過が順調となることが期待されます。また万一、一方の胎児が死亡した場合でも、生存している胎児の血流の変動を防ぐことで、死亡や脳障害を予防できることが期待されます。

この臨床試験は、この重症Selective IUGRの患者さんのうち、妊娠20~25週未満の方を対象に、児の予後の改善を目的としたレーザー手術を行い、手術の安全性を検討するために実施しています。参加される患者さんは治療後最低2週間以上の入院が必要となります。試験は2012年1月から開始し、10人の患者さんに参加して頂く予定です。レーザー手術は、現在行われているTTTSに対するレーザー手術に準じて行います。レーザー手術は胎児鏡にて子宮内の胎盤表面の吻合血管を同定し、吻合血管をレーザーにて凝固を行います。視野を確保するため必要に応じ人工羊水を子宮内に注入することもあります。すべての吻合血管の凝固が終了した後、残った吻合血管がないかどうかを確認して終了とします。術後には子宮収縮抑制剤を使用した切迫流早産に対する予防治療を開始します。

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大阪府立母子保健総合医療センター 石井 桂介 0725-56-1220