最終更新日:2015年08月31日

双胎間輸血症候群(TTTS)

双胎間輸血症候群(TTTS)とは?表示

TTTSは一絨毛膜双胎に起こる特殊な病気です。共有している胎盤でつながっている血管(吻合血管)を通じて、互いの血液が両方の胎児の間を行ったり来たり流れており、通常はバランスがとれているため問題がありませんが、このバランスが崩れたときTTTSが発症します。血液を余分にもらっている方の胎児(受血児)は全身がむくんできて、心不全、胎児水腫という状態になります。また、胎児の尿量が増えることにより羊水過多となります。一方、血液を送り出している胎児(供血児)は、発育不全で小さくなり、尿量が少なくなるため腎不全や羊水過少となります。この病気は一絨毛膜双胎の約1割におこり、無治療では児の救命が困難です。TTTSはどちらか一人の児の病気ではなく、どちらの児も状態が悪くなることが特徴です。

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双胎間輸血症候群(TTTS)の臨床症状は?表示

母体の症状としては、羊水過多による腹囲・子宮底の急激な増大が認められます。それにより上腹部圧迫感や子宮収縮なども感じます。腹囲の増大にともない母体の口渇症状(のどが渇く)を感じることも多いようです。また、TTTS発症前には母体の急激な体重増加(一週間に1.5Kg以上の体重増加)がみられることもあります。

双胎間輸血症候群(TTTS)の診断は?表示

超音波検査で行います。一絨毛膜二羊膜双胎で羊水過多と羊水過少を同時に満たすことで診断されます。羊水過少や羊水過多をきたす場合は除外されます。

●双胎間輸血症候群の診断基準:
・羊水過多(超音波による羊水深度が8cm以上)と羊水過少(羊水深度が2cm以下)が同時にみられること
・羊水過多・過少をきたす他の疾患が除外されていること
羊水過多:胎児消化管閉鎖・狭窄、嚥下困難、神経管破裂など 羊水過少:破水、尿路閉鎖、腎無形性など

双胎間輸血症候群(TTTS)の重症度(ステージ分類)表示

TTTSの診断が確定したら、重症度分類が行われます。

TTTSのStage 分類(Quintero)

症状/Stage I II III IV V
classical atypical
羊水過多過少  +  +  +  +  +
供血児の膀胱がみえない  ー
(みえる)

(みえない)
 +
(みえない)
 ー
(みえる)
 + or −  + or −
血流異常  ー  ー  +  +  + or −  + or −
胎児水腫  ー  ー  ー  ー   +  + or −
胎児死亡  ー  +

注1:Stage Iは、「供血児の膀胱がみえること」かつ「血流異常がないこと」
注2:血流異常は、1) 臍帯動脈拡張期途絶逆流、2) 静脈管逆流、3) 臍帯静脈の連続する波動のいずれかを、供血児および受血児のどちらか一方に認めれば、Stage IIIと診断してよい
注3:血流異常を認めるが供血児の膀胱が見えるものは、Stage III atypicalと亜分類し、膀胱が見えないStage III classicalと区別する
注4:供血児および受血児のどちらか一方に胎児水腫を認めればStage IVと診断する。血流異常や供血児の膀胱の確認は問わない
注5:供血児および受血児のどちらか一方が胎児死亡となったものはStage Vと診断する。血流異常、胎児水腫の有無、膀胱の確認は問わない

双胎間輸血症候群の治療表示

在胎週数と重症度により治療法を考慮します。胎外生活が十分可能な週数(未熟児治療が可能な週数)であれば、分娩し新生児治療を行います。胎外治療が困難な時期では、胎児治療が選択されます。26週未満のTTTSに対しては、胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP: fetoscopic laser photocoagulation for communicating vessels)が第一選択です。ただし、条件が悪くFLPができない場合などは、積極的羊水除去も選択されます。
TTTSと診断された場合、重症度の判断および施設での対応状況(新生児管理、胎児治療など)に応じて、高次施設との連携をとりながら管理・治療することが大切です。

胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)とは?表示

FLPは妊娠26週未満のTTTSに対する第一選択の治療と考えられています。しかし、TTTSと診断された全ての方に治療が行えるわけではありません。日本では、以下の基準を満たした方にFLPを行っています(2012年から保険適応あり)。

表)双胎間輸血症候群に対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)の適応と要約(Japan Fetoscopy Group)

TTTSに対するFLPの適応と要約
適応 TTTSである
MD 双胎, 受血児の羊水過多(MVP≥8cm)と供血児の羊水過少(MVP≤2cm)
妊娠16週以上、26週未満
ただし、26週以上28週未満で、受血児の羊水過多がMVP≥10cmの場合は含む
Stage I〜IVである
要約 未破水である
羊膜穿破・羊膜剥離がない
明らかな切迫流早産徴候がない
母体が手術に耐えられる(重篤な母体合併症がない)
母体感染症がない(HIVは禁忌)

・治療方法(手技)
母体と胎児に十分な麻酔(硬膜外麻酔、局所麻酔+静脈麻酔など母体の状態にあわせて選択します)を施行した後、母体の腹壁に小さな皮膚切開を加え、受血児の羊水腔に幅広(3.8mm)の針(トロッカー)を挿入します。トロッカーより胎児鏡(2mm〜3.5mm)を挿入し、胎盤表面の吻合血管を全て検索し、胎児鏡より挿入した医用レーザー(400〜1000μm)にて吻合血管を焼灼します。全ての吻合血管を焼灼した後に羊水を除去して終了となります。ほとんどの治療はこの一本のトロッカーのみで可能ですが、稀にもう一本トロッカーが必要となることがあります。

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羊水除去術表示

羊水除去術はいろいろな理由でFLPが実施できない場合に行います。母体に局所麻酔を行い1mm前後の針を子宮内に挿入し、余分な羊水を除去します。羊水過多症による症状(子宮収縮や母体の圧迫症状)を軽減すること、および妊娠期間を延長することが目的となります。

羊水除去によりTTTSの症状が改善することもあります。繰り返し羊水除去を必要とすることが多く、通常は数回から十数回の治療が必要です。

TTTSに対するFLPの成績表示

妊娠26週未満のTTTSにおいてはFLPにより生存率が上昇し、神経学的後遺症も減少しました。従来の羊水除去による治療では(重症度により差はありますが)生存率50-60%で神経学的後遺症が25%程度でしたが、FLPの導入により、生存率は80%、神経学的後遺症は5%程度と改善することができました。児が二人とも生存できる割合が67%、一人生存できる割合が25%ですが、残念ながら二人とも亡くなってしまう割合が8%程度です。

分娩週数 32.2週
少なくとも1児生存割合
生後28日 91.2% 165/181
生後6ヶ月 90.1% 163/181
胎児生存率 83.3% 298/362
新生児生存率(生後28日) 77.9% 282/362
乳児(生後6ヶ月)
生存率 76.0% 275/362
神経後遺症のない生存率 72.4% 262/362
生存乳児における神経後遺症なし 95.3% 262/275
生存乳児における神経後遺症あり 4.7% 13/275

Sago H. (Japan Fetoscopy Group)  Prenatal Diagnosis 2010

どこで治療可能ですか?表示

どこの施設でも治療が行えるわけではありません。現在日本では8カ所の施設で治療が可能です(2014年12月現在)。

施設 代表者 連絡先
宮城県立こども病院 室月 淳 022-391-5111
成育医療研究センター 左合 治彦 03-3416-0181
聖隷浜松病院 村越 毅 053-474-2222
長良医療センター 高橋 雄一郎 058-232-7755
大阪府立母子保健総合医療センター 石井 桂介 0725-56-1220
川崎医科大学附属病院 村田 晋 086-462-1111
北海道大学附属病院 産婦人科 森川 守 011-716-1161
福岡市立こども病院 住江 正大 092-682-7000

参考文献表示

TTTSに対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術の成績

1.M. V. Senat, J. Deprest, M. Boulvain, A. Paupe, N. Winer and Y. Ville. Endoscopic laser surgery versus serial amnioreduction for severe twin-to-twin transfusion syndrome. N Engl J Med 2004; 351: 136-144.

2.T. Murakoshi, K. Ishii, M. Nakata, H. Sago, S. Hayashi, Y. Takahashi, J. Murotsuki, M. Matsushita, T. Shinno, H. Naruse and Y. Torii. Validation of Quintero stage III sub-classification for twin-twin transfusion syndrome based on visibility of donor bladder: characteristic differences in pathophysiology and prognosis. Ultrasound Obstet Gynecol 2008; 32: 813-818.

3.M. Nakata, T. Murakoshi, H. Sago, K. Ishii, Y. Takahashi, S. Hayashi, S. Murata, I. Miwa, M. Sumie and N. Sugino. Modified sequential laser photocoagulation of placental communicating vessels for twin-twin transfusion syndrome to prevent fetal demise of the donor twin. J Obstet Gynaecol Res 2009; 35: 640-647.

4.H. Sago, S. Hayashi, M. Saito, H. Hasegawa, H. Kawamoto, N. Kato, Y. Nanba, Y. Ito, Y. Takahashi, J. Murotsuki, M. Nakata, K. Ishii and T. Murakoshi. The outcome and prognostic factors of twin-twin transfusion syndrome following fetoscopic laser surgery. Prenat Diagn 2010; 30: 1185-1191.

5.K. Ishii, M. Saito, M. Nakata, Y. Takahashi, S. Hayashi, T. Murakoshi, J. Murotsuki, H. Kawamoto and H. Sago. Ultrasound prognostic factors after laser surgery for twin-twin transfusion syndrome to predict survival at 6 months. Prenat Diagn 2011; 31: 1097-1100.