最終更新日:2021年03月11日

胎児先天性横隔膜ヘルニアに対する胎児鏡下気管閉塞術の早期安全性臨床試験(症例募集終了)先天性横隔膜ヘルニアに対する胎児治療

概要表示

「臨床試験治療プロトコール」に従い、適格と判断された重症先天性横隔膜ヘルニア(以下CDH)の症例を、胎児鏡下バルーン気管閉塞術(以下FETO)を施行してその後の経過を観察します。FETO及びバルーン除去術は、国立成育医療研究センター(以下、成育センター)で実施します。

総論表示

CDHは先天的に横隔膜に欠損が生じ、その欠損部位を通って胃・脾臓・小腸・大腸・肝臓といった腹腔内臓器が胸腔内へ脱出し、正常な肺を圧迫する疾患です。出生児2500人に1人の割合で発生するとされています。この疾患で最も問題となるのは、胎児期から正常な肺が圧迫され続けた結果により生じる肺の低形成です。欠損の部位や大きさによってはほとんど症状や障害を起こさないものもありますが、横隔膜の後外側に欠損のあるものは、出生直後から肺高血圧や呼吸不全等の重大な症状を来します。

近年では出生前診断の進歩に伴い、出生前から周産期センター等の基幹病院に集約化されるようになり、新生児管理も向上してきましたが、依然死亡率は20−30%と高い状況が続いています。

原因表示

横隔膜が形成されるのは妊娠10週頃で、横隔膜に欠損があると欠損部位を通って胸腔内に胃、腸、脾臓、肝臓などが脱出することがあります。多くの腹腔内臓器が胸腔内へ入り込むと、肺の発育が不十分となり新生児期の肺高血圧や呼吸障害の原因となります。

CDHは単独で起こることもありますが、染色体異常や他の先天異常を合併することもあります。

診断表示

診断は超音波検査によって行われます。健側肺や脱出臓器の評価をより詳細に行う目的でMRI検査も行われます。合併症の有無によって予後が大きく変わることから、羊水穿刺による染色体検査や超音波検査で他臓器のスクリーニングも行います。また合併する肺低形成については、肝臓の挙上の有無、胸腔内へ脱出した胃泡の位置、O/E LHR (observed-expected Lung-to-Head Ratio)によって評価します。O/E LHRは心臓の四腔断面で健常側の肺の面積をトレース法で測定して計算します。(http://www.totaltrial.eu/参照)。

対象表示

1)妊娠27週0日~31週6日
2)妊婦は16歳以上45歳未満
3)胎児は左側CDHと出生前診断されている単胎である
4)胎児は肝臓脱出型(Liver up)のCDHであり、胃泡の半分以上が右胸腔内に脱出している(Grade3)。 胃泡の位置は胎児胸部水平断面像の超音波画像所見において、胃泡が脊椎と胸骨を結ぶ正中線を越えて健側に偏位しているものとする。評価は、胃泡が腹腔内にとどまる(Grade0)/胃泡が正中線を全く越えていない(Grade1)/正中線を越えている胃泡は半分以下で一部(Grade2)/正中線を越えて胃泡の半分以上が健側に偏位している(Grade3)の4段階とする。
5)当該疾患以外の重篤な胎児奇形(染色体異常、致死的な心疾患)がない
6)妊娠高血圧症候群(Pregnancy-induced hypertension;PIH)ではない
7)性器出血がない
8)破水していない
9)子宮頸管長が20mm以上である
10)患者本人と患者の配偶者から同意が得られている

胎児治療表示

「臨床試験治療プロトコール」に従い、適格と判断された重症CDH症例に、FETOを施行してその後の経過を観察します。FETO及びバルーン除去術は、成育センターで実施します。
FETOの目的は、胎児の気管を閉塞することで、肺胞液が肺に貯留する結果、肺が拡張して肺の成長が促進され、出生後の呼吸状態が改善することにあります。
具体的な手順としては、以下の通りです。

1)O/E LHR 25%未満は27週0日〜29週6日で、O/E LHR 25%〜45%は30週0日〜31週6日でFETOを施行
2)34週0日~34週6日でバルーン除去術の施行
3)出生後、標準化された積極的治療を施行

治療成績と予後表示

Eurofetus groupの報告によると、FETOが施行された重症CDH症例210例において、妊娠37週未満の前期破水は、FETO施行後30日以内の発症が47.1%、FETO施行後3週間以内の発症が16.7%でした。分娩週数は平均35.3週、34週未満の早産は30.9%、32週未満の早産は12.6%であり、出生率は97.1%、生存退院率は48.0%であったと報告されています。この結果を待機的管理に行った対照群のものと比較したところ、重篤な合併症を伴わない左側CDH症例では、生存率が24.1%から49.1%へ改善することが分かりました。

研究期間および目標症例数表示

研究期間:平成25年10月より3年間の予定
目標症例数:早期安全性試験10例

臨床試験参加施設表示

平成25年1月31日現在(登録順に表記)
・国立成育医療研究センター

お問い合わせ先表示

(研究代表者)
国立成育医療研究センター 周産期センター
左合治彦

(研究事務局) 国立成育医療研究センター 周産期センター 胎児診療科
和田誠司

〒157-8535 東京都世田谷区大蔵2-10-1
電話:03-3416-0181
FAX:03-3416-2222