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胎児疾患HP ・胎児頻脈性不整脈(一般)・胎児頻脈性不整脈(臨床試験)・CDH・TTTS
最終更新日:2020年11月13日
Twin reversed arterial perfusion sequence (TRAP sequence;トラップシークエンス)は無心体双胎(acardiac twin)ともよばれ、頻度は全妊娠の1/35000で一絨毛膜双胎にのみ起こる特殊な病態です。一方の胎児は正常児であるのに対して、もう片方の胎児が発生の異常により心臓が無い場合に起こる病態です。一絨毛膜双胎では1つの胎盤を共有しており、両児が胎盤の血管でつながっているため、心臓がある胎児(ポンプ児)が無心体児に胎盤の吻合血管、臍帯動脈を通じて血液を供給し、まるでポンプ児が無心体児を育てているような状態になっています。そのため無心体が大きくなったり、無心体内の血流が増加したりすると、ポンプ児の心臓にはさらに負担がかかるためポンプ児は心不全に至ります。この状態になってしまうと、ポンプ児の尿量が増加して羊水過多が進行し、破水や陣痛発来のきっかけとなったり、心不全のため胎児水腫になったりします。無治療であると本来健康であるはずのポンプ児の死亡率は、約50-75%と胎児の救命は極めて困難です。したがって胎児治療が必要となる代表的疾患の一つです。
原因は一卵性双胎における卵の分割過程の異常といわれています。
TRAP sequenceにおいて胎児治療が必要であるのは、一般的にはポンプ児に心不全徴候や羊水過多が認められる場合、無心体児がポンプ児にくらべ著しく大きい場合などとされています。一方で、低侵襲な治療が可能であればすべてのTRAP sequenceで治療をすべきとする意見もあります。
TRAP sequenceに対する胎児治療としてさまざまな方法が報告されてきましたが、ポンプ児から無心体に流れる血流を遮断する治療法が主流です。血流遮断の方法は大きく分けて2つに分類されます。1つは臍帯の血流を遮断する方法、もう1つは無心体内の血流を遮断する方法です。ラジオ波を用いた無心体内血流遮断術は負担が少なく手技も比較的簡便なため我が国で主流となり良い治療成績を挙げ、2019年3月より保険適応となりました。
ラジオ波焼灼術の適応は、妊娠15週0日から27週6日までの無心体双胎(acardiac twin)のうち臍帯動脈から無心体への逆行性血流を認めるTRAP sequenceの症例で、無心体とポンプ児の腹部周囲長の比が1.0以上の場合です。
2014年Chaveevaらの報告によるとラジオ波焼灼術が行われた108例の生存率は80.8%でした。我が国におけるラジオ波焼灼術後の生存率は85-88%です。