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胎児疾患HP ・胎児頻脈性不整脈(一般)・胎児頻脈性不整脈(臨床試験)・CDH・TTTS
最終更新日:2020年11月13日
胎児も貧血になることがあります。重症の胎児貧血の原因としてもっとも多いのは血液型不適合妊娠です。代表的なものはRh式血液型で、母親がRh(D)陰性、胎児がRh(D)陽性のときに母親の体内で抗D抗体が作りだされると、胎児が溶血性貧血をおこすことがあります。ヒトパルボウィルスB19感染(リンゴ病)などによっても胎児貧血になります。
胎児貧血を診断する方法として、超音波検査と胎児採血があります。超音波検査は、貧血があると血流速度が速くなることを応用し、胎児の脳内の血管血流速度を計測して貧血の有無を推測します。超音波検査は侵襲が少なく繰り返しできますが、間接的な所見をとらえることしかできません。超音波ガイド下に臍帯静脈から胎児の採血をすることで、確定診断されます。
胎児輸血は、重症の胎児貧血の治療に用いられます。最も成功した胎児治療の一つであり、現在のような超音波ガイド下に臍帯静脈を介して輸血する方法は、1980年代から行われています。
実際には、母体の腹壁を穿刺する場所に局所麻酔をおこない、超音波ガイド下に臍帯静脈を穿刺します。状況によって胎児のお腹の中に輸血することもあります。感染症のないことが確認された、母体血漿との交差適合試験で適合したO型の血液を用い、計算して決めた量を輸血します。
頻度は少ないですが、胎児心拍異常、穿刺部の出血や胎児の心不全、感染、前期破水、早産などの合併症があります。胎児輸血は、技術的に熟練を要するため可能な施設は限定されております。
胎児輸血の実施について、日本周産期・新生児医学会の「胎児輸血実施マニュアル」(2017年)に詳しく記載されています。https://www.jspnm.com/Teigen/docs/teigen170831.pdf
予後は胎児貧血の原因によって異なりますが、血液型不適合妊娠による胎児貧血のため589例に実施した計1678回の胎児輸血の報告では、生存率89%(1988~2000年)、97%(2001~2015年)という良好な治療成績でした。