最終更新日:2015年01月04日

胎児胸水(乳び胸)

胎児胸水(乳び胸)とはどんな病気?表示

原発性胸水とは胸水以外に異常を認めないもので、先天性乳び胸といわれ胎児期に胸腔内(肺の外側)にリンパ液が漏れだしてしまう病気です。頻度は約1万出生に1例といわれています。胎児胸水は一部に自然に良くなる場合がありますが、良くならずに大量に貯まってしまうと心臓を圧迫して、胎児水腫になります。また肺が長期間圧迫されると肺の発育が阻害され予後は不良です。

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胎児治療表示

胎児の胸腔にカテーテルを留置して胸水を羊水腔内に持続的に排液する胸腔-羊水腔シャント術が、1986年に初めて報告されました。最近の報告では、重症の胎児水腫合併の生存率は62%(77/125)で、胎児治療を行わなかった場合の生存率35%(7/20)に比べ有効でした。日本では1990年頃に、日本独自のダブルバスケットカテーテル(八光商事)が開発されました。最近われわれの胎児治療グループでこのカテーテルを用いた臨床試験を行い(別項参照)胸腔-羊水腔シャント術の有用性を示しました。

胎児治療は具体的にどのようにされますか?表示

胸腔-羊水腔シャント術は、心臓と肺への圧迫を除き胎児水腫の改善と肺低形成の予防を目的としています。

大量胸水を認めた場合、まず診断と治療を兼ねて胸腔穿刺を行い、1週間以内に再貯留する場合は、重症例と判断され、シャント術を行います。超音波ガイド下で母体腹壁から子宮内の胎児胸腔内と羊水腔を結ぶカテーテルを挿入して、胸水を持続的に羊水腔内へ排液します。胸水が羊水腔に排液されると、肺がふくらみ、心臓が大きくなります。やがて徐々に胎児水腫は改善していきます。しかし、直後には子宮収縮が増強したり、一過性に羊水が増加したりする事もあります。またチューブが胎動や胎脂などで閉塞したり、抜けてしまったりすることもありますので、術後はしばらく詳細な母児の観察が必要です。

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日本における臨床試験表示

この治療を普及させるために、カテーテルの安全性確認試験の必要性が生じましたので、本研究グループで平成20年4月より22年3月までに「重症胎児胸水に対する胸腔-羊水腔シャント術に関する研究」(厚生労働省科学研究)として臨床試験を実施しました。全体の生存率は79%(19/24)、胎児水腫例で71%(12/17)、胎児水腫を認めない例では100%(7/7)とこの治療の有効性が示されました。合併症として、シャント術後28日以内の前期破水は4%(1/24)で、またシャントチューブの脱落を10%(4/42)に認めました。日本のダブルバスケットカテーテルを用いたシャント術の有効性と安全性が証明されました。

2011年10月にダブルバスケットカテーテルが胎児使用の為の医療機器として正式に承認されました。また2012年7月からは胎児胸水に対するシャント術が正式に保険適応となり、胎児治療のあたらしいステップとなりました。

胎児シャント(Prenatal Diagnosis 2012より、八光)

胎児シャント(Prenatal Diagnosis 2012より、八光)

臨床試験関連 論文、発表表示

1)Thoraco-amniotic shunting for fetal pleural effusions using a double-basket shunt. Yuichiro Takahashi,Ichiro Kawabata; Masahiro Sumie; Masahiko Nakata; Keisuke Ishii ; Takeshi Murakoshi; Shinji Katsuragi; Tomoaki Ikeda; Mari Saito; Hiroshi Kawamoto; Satoshi Hayashi; Haruhiko Sago. Prenat Diagn 2012;32;1-6.

2) 高橋雄一郎、川鰭市郎、左合治彦;重症胎児胸水に対する胸腔―羊水腔シャント術の治療効果と安全性に関する臨床使用確認試験の概要;産婦人科の実際61;1519-1525.

シャント術施行施設基準表示

胎児手術としての質を維持する必要性から、治療を施行する場合の条件が必要となっております。

株式会社八光が製造販売する販売名称「胎児シャント」(医療機器承認番号:22300BZX00465000 以下本製品という)を使用するに際し、下記の実施基準を満たしている必要があります。

確認する実施基準
・本製品を用いた手技を実施する施設基準
1.緊急帝王切開に対応できる設備ならびにNICUを有していること。
2.麻酔科医、新生児医療を専門とする医師および小児外科医の協力が得られる体制を有していること。
3.胎児治療を審査できる倫理委員会を有しており、倫理委員会で承認されること。

・本製品を用いた手技を実施する実施医基準
1.5例以上の胎児胸水の診療経験を有する日本産科婦人科学会専門医であること(日本周産期・新生児学会専門医または指導医であることが望ましい)。
2.胎児胸腔・羊水腔シャントチューブ留置術の経験(少なくとも2例以上)があること。
但し、1.を満たすが、2.を満たさない場合は、胎児胸腔・羊水腔シャントチューブ留置術の豊富な経験(少なくとも5例以上)がある指導医の監督下で実施すること。

市販後調査について表示

「胎児シャント」の市販後調査について

市販後調査は、「胎児シャント」の承認取得の際に承認条件として付された再審査申請を行うための安全性、有効性を含めた使用成績等の資料の収集を行うための調査です。「胎児シャント」の場合には、薬事法上で定められた「特定使用成績調査」に該当します。
「胎児シャント」を使用した全症例を登録し、市販後調査(特定使用成績調査)を実施することになります。
尚、市販後調査(使用成績調査)結果は、毎年(7年間)独立行政法人医薬品医療機器審査機構へ報告することとなっています。

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現在までの胎児シャント登録施設一覧表示